IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

商標「祝!ボジョレー解禁!~ワインを飲みながら商標を考えた~」【MI】

祝!ボジョレー解禁!

今年もこの季節がやってきました。あまりワインに詳しくない&味もわからない私ですが、ボジョレーは飲みやすくておいしくいただいています。このご時世なので楽天で購入しましたが、もう「ボジョレー」って見ただけで買ってしまいました。では乾杯!

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と、飲みながら思いました。

『その辺のワインに「ボジョレー」と付けて売ったらボロ儲けなのでは、、、』

私はさすがにやりませんが、例えば、どこかの悪い輩が「ボジョレー」で商標取って、テキトーなワインに「ボジョレー」のラベルを付けて売ってたら恐ろしい、、、

今回は、そんな視点から商標についていろいろ考えてみたことを書いてみます。

 

 ※参考として商標法の条文を載せていますが、興味のない方は読み飛ばしていただいてOKです。

 

「ワインの産地名」は商標登録されるか? 

原則として「産地名のみを普通に書いただけもの」は商標登録されません(商標法3条1項3号)。これはワインに限らずどんな商品にも言えることです。

<参考>商標法3条1項3号(下線は筆者)

その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状(包装の形状を含む。)、価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態様、価格若しくは提供の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標

 例えば、りんごに「青森」って書いてあっても、「へー、青森産なのかな」ぐらいにしか思いませんよね。商標法はそういった商標の登録を認めません。

 

ワイン等の産地名についての規定(商標法4条1項17号)

さらに、ワイン(ぶどう酒)や蒸留酒(以下、「ワイン等」とまとめます)の『「産地名」を含む商標』については、商標法にこんな規定があります。

<参考>商標法4条1項17号(下線は筆者)

日本国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地のうち特許庁長官が指定するものを表示する標章又は世界貿易機関の加盟国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地を表示する標章のうち当該加盟国において当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒若しくは蒸留酒について使用をすることが禁止されているものを有する商標であつて、当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒又は蒸留酒について使用をするもの

要するに、ワイン等については「産地名のみの商標」だけでなく、「特定の産地名を含む商標」(例えば「産地名+○○」)についても決まりがあります。特定の産地名(例えば「ボジョレー」)を含む場合、その産地(ボジョレー)で生産されたワイン等に付ける場合しか登録を認めない、ということです。

特定の産地として、日本国内では「北海道」や「山梨」が指定されています。

www.jpo.go.jp

また、世界貿易機関WTO)による特定の産地は以下の通りです。

WTO加盟国によって保護されているぶどう酒又は蒸留酒の産地の表示リスト

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/trademark/binran/document/index/data2_2.pdf

上記リストの2ページ目、登録番号132のところに「BEAUJOLAIS」(ボジョレー)がしっかり入っています。

ということで、悪い輩がテキトーな(ボジョレー産ではない)ワインに付けるために、「ボジョレー」(またはそれを含む商標)で商標登録を受けることはできないということになります。一安心です。

また、上記リストは各国語で書かれていますが、対応する他国語(例えば、片仮名)で書いた場合も該当します。(下記、特許庁「商標審査基準」参照)

(例1)片仮名で表示した標章:「BORDEAUX」を「ボルドー

(例2)その翻訳と認められる文字で表示した標章
    「BOURGOGNE」(仏語)を「BURGUNDY」(英語)

また、特定の産地名を「含む(有する)」ということについては、形式的に構成中に含むか否かにより判断するとのことで、以下の例は「含む」に該当します。
(例)「山梨産ボルドー風ワイン」、「CHAMPAGNE style」

特許庁「商標審査基準」

https://www.jpo.go.jp/system/trademark/shutugan/tetuzuki/document/mitoroku/26_4-1-17.pdf

商標法では「登録できない商標」についていろんな規定がありますが、特定の商品についての規定はこれくらいではないでしょうか?現在の商標法は、国際的な取り決め(条約等)にも合うようになっていますが、世界的に見たときの「ワイン等の産地」の重要性がうかがわれます。

 

「ワインの産地名+○○」の登録商標 

最後に、「ワインの産地名+○○」で登録されている商標をいくつか紹介します。

※なお、「指定商品」というのは、この商品に付けて使うよと申請した商品です。全て、商標に対応した産地を限定しているところに注目です

・商標登録5465383号「ボジョレーの騎士

 権利者:株式会社ヴィノスやまざき

 指定商品:ボジョレー産のぶどう酒 

www.v-yamazaki.com

上記サイトによると「ボジョレー・ヌーヴォーを日本で啓蒙活動し、多大な貢献をしているとボジョレー委員会から2009年「ボジョレーの騎士」の称号をいただきました。」とのこと。その称号を日本で商標登録したということのようです。

 

 

・商標登録6177800号

 「KING OF BORDEAUX\キング オブ ボルドー

 権利者:サントリーホールディングス株式会社

 指定商品:ボルドー産のワイン

www.suntory.co.jp

上記サイトによると、サントリー社が仏カステル社の「バロン ド レスタック」を「KING OF BORDEAUX」として売り出しているようです。

 

・商標登録4862424号「ボルドーの武道酒

 権利者:道上商事株式会社

 指定商品:フランス国ジロンド県産の葡萄酒

これ面白い!と思ったんですが、検索では引っかかりませんでした、、、ご存じの方はご一報を。笑

 

以上、お付き合いいただきありがとうございました。

引き続き、秋の風物詩にもなった「ボジョレー」を楽しみたいと思います!