IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

商標「ポケモンカードゲームから考える商標」【MI】

こんにちは。

前回に引き続きポケモンカードゲームから知財をあれこれ考えていきたいと思います。それにしても人気がすごい!先日も「ポケカ投資家」なるワードがyahooニュースのトップを賑わせていましたし、一昨日(5/28)に「イーブイヒーローズ」という新シリーズが発売されたんですが、web予約開始日(5/7)には公式サイトがパンク、当日販売分を抽選販売に切り替える等の対応が取られました。私は抽選は見事にハズレましたが、近所のお店で買うことができました。

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さて、今回は商標をメインに以下のメニューでお話したいと思います。よろしくお願いいたします!

 

 

今後発売されるシリーズの名前が分かる?! ~商標の公開制度~

ネットでは、公式には発表されていない今後発売予定のシリーズ名が出ています。

参考

ポケモンカードの最新弾情報・拡張パック発売スケジュールまとめ | ポケカ速報まとめブログ ポケモンカード探し

なぜ分かるのか?

独自の情報網を持っている方もいると思いますが、実は商標出願からも今後出るだろうシリーズを予測することができます。例えば、特許や商標を検索できる「J-Platpat」というサイトで検索すると、ポケモンカードゲームに関連すると思われる、以下の出願が見つかります。

※日付は出願日。全て未登録(2021/5/30現在)。

 2020/11/10「VSTAR」

 2020/11/27「イーブイヒーローズ」

 2020/11/27「摩天パーフェクト」 

 2020/11/27「蒼空ストリーム」  

 2020/11/24「V-UNION」     

 2020/12/24「フュージョンアーツ」

 2021/1/8 「VMAXクライマックス」

商標は「先願主義」といって「早く出願した人勝ち」の制度が採用されていますが、原則として出願日から2、3週間程度経過後、出願内容が一般に公開されるからです(出願公開制度)。

参考

初めてだったらここを読む~商標出願のいろは~ | 経済産業省 特許庁

本来の趣旨は、他の人が出願した商標を調べられるようにして侵害を防ぐことですが、その情報から「今後発売される商品」を予測できるのが面白いところです。個人的には「フュージョンアーツ」とか気になりますね。

 

こんな単純なものも商標に?! ~漢字一文字の商標~

商標制度では「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章」は原則として登録されません。例えば、

 ・数字(「123」等)

 ・ローマ字の1字又は2字からなるもの(「A」等)

 ・仮名文字(変体仮名を含む。)1字(「あ」等)

はこれに該当します。

特許庁 商標審査基準 第1 第3条第1項(商標登録の要件)

七 第3条第1項第5号(極めて簡単で、かつ、ありふれた標章)

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/trademark/kijun/document/index/09_3-1-5.pdf

このような商標(「123」とか「A」とか「あ」とか)は、商標としての機能(誰の商品かを表示する機能)を果たさないから、特定の人に独占させる(商標権を与える)のは適切でない、というのが理由です。

ところで、任天堂(株)は、「ゲーム用トレーディングカード」について、以下の商標権を持っています。

 登録6262688「悪」

 登録6262690「鋼」

 登録6262693「超」

 「え?漢字一文字はいいの?」と思いますよね。これはおそらく、漢字は表意文字であり、一文字であってもそこに特定の意味(観念)を表すことができるためと思われます。漢字一文字の商標は登録できる可能性があることを覚えておきましょう。

ただ、商標は「商品」の販売等に関連して用いられる(商標的使用)場合に問題になるため、例えば、SNSで、

 「ポケモンカードゲームをパクる『悪』いヤツがいた!」

 「『鋼』のメンタルで勝ち切りました!『超』うれしい!」

と投稿するのは大丈夫なので安心してください。

 

フリガナも商標の一部? ~2段書き商標~

ポケモン関係では、キャラクターの名前も出願されています。例えば、今の「ソード&シールド」シリーズの御三家もバッチリ出願・登録されています。

 ・登録6231071「サルノリ\SARUNORI」

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 ・登録6231072「メッソン\MESSON」

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 ・登録6231073「ヒバニー」

 ・登録6231074「HIBANNY」

※「\」は改行(段変え)を意味します。

ここで気になるのは、なぜサルノリとメッソンは「カタカナとローマ字の併記」で、ヒバニーは「カタカナとローマ字を別々に出願」されたのかということです。

カタカナとローマ字を併記した商標は「2段書き商標」と言われます。これは、1つの出願・登録で実質的に「カタカナ商標」と「ローマ字商標」を守れるものとして出願されます(例えば、「QRコードQR CODE」事件:平成30年(行ケ)第10059号(知財高裁H31/1/29))。コスト削減できますね。

しかし、これにはリスクもあります。例えば、「ブロマガ\BlogMaga」事件(平成30年(行ケ)第10102号(知財高裁H30/12/20))では、カタカナ部分(ブロマガ)やアルファベット部分(BlogMaga)をそれぞれ別々に使っていた場合、それは登録商標(ブロマガ\BlogMaga)の使用ではないとして、登録が取り消されてしまいました。

よく見ると「HIBANNY」は完全はローマ字ではないですよね。おそらく、任天堂さんは、「ヒバニー\HINANNY」と1つの出願で済ませた場合に同じようなリスクがあることを危惧して別々に出願したのではないかと思います。実際は「サルノリ」「メッソン」「ヒバニー」とカタカナで表記されることが多いので。策に溺れず、「商標は実際に使用する形式で出願する」のが基本です。

 

おわりに

最後はちょっとマニアックな話になってしまいました。。。

それでは、今日のまとめです。

  • 商標は「早く出願した人勝ち」。公開情報で他人の商標を調べよう!(面白い商標が見つかることも。。。)
  • 漢字一文字の商標は登録できる可能性がある!
  • 「商標は実際に使用する形式で出願する」のが基本!

これでポケモンカードゲームシリーズもネタ切れです。よろしければ、過去の記事も是非ご覧下さい。

discussiong1.hatenablog.com

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本日も最後までお読みいただきありがとうございました!